フランス語の動詞「imiter」が、日本語の動詞「模倣する」とは一致しない点とその後の考察

今回の記事では、フランス語の動詞「imiter」について感じたことを深掘りして考察したいと思います。

人間
  • フランス語の単語は日本語と一対一で対応しないの?
  • imiterの用法が知りたい!
  • くだらない考察を聞きたい。
 
こんな思いを解決した記事になっています。
 
先日、ふとしたタイミングで動詞imiterの用法を確認していたら、日本語とはまったく違う意味を持っていることに(イマサラ)気づきました。
そこからいろいろ考えていたのですが、ややこしくなったので文章で整理しておこうと思います。
①:そもそも訳は一対一対応しない
②:imiterの用法を解説
③:よりよい「模倣する」とは?

この記事の構成はこんな感じです。これを読めば、フランス語の知識が増えるというよりも、時間つぶしになるはずです。

それでは、さっそく見ていきましょう!

訳は一対一対応しない

(例)frère

まず基本的な話ですが、フランス語の単語と日本語の単語の意味が、完全に一致するということはなかなかないです。

もちろん、「太陽」「」などの世界に1つしか存在しないものは対応しているだろうし、「1+2=3」という概念は普遍的なものなので、対応しているでしょう。

しかし、例えば

frère」という単語。

これは、「兄」と「弟」という単語の両方の意味を持っており、ここに「年齢差」による区分がないことがわかります。

だから、

「兄=frère」、「弟=frère」のように完全に一対一対応して覚えるということは難しいです。

このような例は、他にもたくさん挙げることができます。

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このような「フランス語と日本語の単語の意味の違い」については、他の記事でも書いているので、そちらを参考にしてください。

前置きが長くなってスミマセン。

動詞imiterの意味と用法

さきほどの内容を前提に、以下でimiterの意味を考えていきたいと思います。

手元にある仏和辞典『プチ・ロワイヤル仏和辞典[第4版]』で、この単語の意味を調べると以下のような意味が書いてあります。

  1. まねる、模倣する
  2. 手本にする、模範にする
  3. 偽造する、模造である

意味はザックリ、3つにまとめられています。

これを、最初は

  1. ニュートラルな意味でマネする
  2. ポジティヴな意味でマネする
  3. ネガティヴな意味でマネする

ということで覚えておけばいいんだな、と思っていたのですが、

「いや、チョット待てよ」

となりました。

模造である!?

さきほどの日本語訳ですが、気になったのは、

模造である

という訳語です。

  • まねる
  • 模倣する
  • 手本にする
  • 模範にする
  • 偽造する

上記の単語と「模造である」という意味には、全く異なる点があります。

それは、

  • (あるいは動物)」が主語になるか、
  • 」が主語になるか、

という違いです。

決定的な違い

つまり、

日本語で「模倣する」の場合は、

が誰か(なにか)をマネする」という意味しか持たないのに対し、

フランス語の「imiter」の場合は、

が物をマネする」というニュアンスでも使えるということですね。

例文

では、具体例を見て確認しましょう。

Cette matière imite le mabre.

このような例文があります。

意味は、「この素材は大理石そっくりにできている」という文です。こんな感じの使い方もできるということですね。

以上が、少し大げさに説明してしまいましたが、imiterの意味と用法のまとめです。

日本語の「模倣する」という単語と対応して覚えていると、たまに訳しづらい場面に出会うかもしれないので、この違いを覚えておくといいかもしれません。

続いて、ここからは個人的なややこしい考察に入っていきたいと思います。

2つの模倣

上記の区分は、先にざっくり結論を書くと、以下のようにまとめることができます。

模倣には2パターンがあります。

  • をマネする=行為概念:行為のプロセスを表している
    人生で必要なこと(だれかを模範とすること)
  • をマネする=記号概念:物同士の関係性を表している
    価値は劣る(劣化版コピーを生むこと)

ではここから、ごぐちゃぐちゃの考えを文字にしながら説明していこうと思います。

行為概念

まず、1つ目の「模倣」ですが、これは「人が人をマネする」パターンのものです。

こちらの模倣の特徴は、行為概念という言葉でまとめています。

つまり、結果よりも行動のプロセスに重点が置かれたもので、誰か模範とする人がいて、それをマネすることによって技術を学んだり、行為を正したりするものです。

「学ぶ」と「真似る」は、語源が同じと言われたりもします。

何かをマネするということは、学びの基本であり、自分の価値を高めてくれる行為であると言えます。

記号概念

次に、2つ目の「模倣」ですが、これは「物が物をマネする」パターンのものです。

こちらの模倣の特徴は、記号概念という言葉でまとめています。

つまり、プロセスよりも行動の結果に重点が置かれたもので、物同士の意味をつなぐ記号のような役割を果たします。

こちらで重要なのは、その「過程」ではなく、結果として「物が似ているかどうか」です。

この場合の模倣は、当然ですが「オリジナル」よりも価値が高まることはありません。

デッサンで考えてみると

おそらく、これらの「模倣」の意味の違いは、芸術としての価値で当てはめて考えると分かりやすいです。

ある風景を描写できるようになるためには、デッサンの練習をしなければなりません。これは、技法をマスターするための「模倣」です。

そして、結果よりもそのプロセスが重要です。

一方、ある有名な作品のデッサンを同じように「模倣」して描いたからといって、この価値がオリジナルより劣っていることは明らかです。

結果に重点を置くこちらで、どんなに似ていたとしても価値の関係性は逆転しません。

大事なのは、判断

では、ここからこの2種類の決定的な違いをまとめます。

さきほど、模倣がパターンとして2つあると紹介したときに、

  • 人が人をマネする
  • 物が物をマネする

という書き方をしましたが、これは「デッサン」の例でもわかる通り、どちらも「人の模倣」に当てはまります。

しかし同じ行為をしているにも関わらず、異なる点があるとするのならば、その違いは、学ぶ「模倣」は、「内から外へ向かう」点です。

つまり、「模倣」は身体的な行為を表しているのですが、「学ぶ」という意味合いが強い模倣(コピーじゃない方)は、まず「それを模倣しようという判断」が存在しているということです。

ファッションでいうと

どんどん話をややこしくしているだけになってきたので、ここで「ファッション」の模倣で例を挙げてみます。

なんだか近年、「オーバーシルエット」なるものが流行しているらしいです。

(これを自分の服装に取り入れるか取り入れないかは、善悪はなく各個人の判断になるでしょう。)

このように「オーバーシルエット」などの流行に乗って、モデルのような今風の着こなしをしたければ、当然、モデルたちの「模倣」から入るという行為は必要です。

(「ただ大きめの服をダボっと着れば良い」というわけではなく、「どこかで細身のものを取り入れてバランスをとる」などの工夫が必要らしい。そして、これを自分のような素人が「模倣」なしでマスターすることは難しい。)

しかし、その行為に入る前に、まず「ファッションの流行を取り入れることは素晴らしい」という判断が先に存在していないと、この行為には至れません。

結論

これだけ話を長引かせておきながら、結論は大したことないです。

結論、「こうありたい」という判断のもとに「何かを模倣して学ぶ」という行為は、わたしたちが生きる上で大事ですよね、という話です。

おそらく個性創造性なんかも、まずはこの「模倣」が出発点です。

小手先のテクニックやノウハウなんかで、全部わかったような気になりがちな現代ですが、泥臭く「模倣」から学ぶ気持ちを忘れずにいたいものです。

今回の記事はここで終わりです。

一番大事なことは、フランス語の動詞「imiter」は、「物が主語になる」場合もあるということです!

ライオン
最後まで読んでいただき、ありがとうございました
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